特発性正常圧水頭症センターを開設しています
久我山病院特発性正常圧水頭症センターは、脳神経外科疾患の中で、特に特発性正常圧水頭症(iNPH)を専門的に扱うセンターとして設立されました。日本に留まらず海外における学会活動に積極的に活動するなど、iNPH治療に携わり多くの研究実績を残してきております。
こんな症状があったらご相談ください
超高齢社会に突入した日本において、認知症患者の増加や介護の負担が社会的問題になっています。当院では、メディア等でも「改善がえられることがある歩行障害と認知症」として取り上げられている特発性正常圧水頭症( i diopathic N ormal P ressure H ydrocephalus;iNPH)の診療に注力しております。iNPHの治療は、患者さまご自身のuseful lifeの観点からも、また、ご家族様の介護を軽減するためにも、今後ますます重要になると考えています。
水頭症(iNPH)とはどんな病気?
高齢になって次第に歩くのが遅くなり、歩幅が小刻みになったり、すり足のような歩き方になる場合があります。このような歩行障害に、物忘れや自発性の低下(認知障害)、あるいは尿漏れ(尿失禁)などの症状が加わってくることがあります。 これらは高齢者ではよく見られる症状であり、いろいろな病気で起こりますが、そのなかに、今まであまり知られていなかった「特発性正常圧水頭症(iNPH)」という病気があります。iNPHは、頭の中の水(髄液)の流れが悪くなって起こります。「髄液シャント術」という手術をすることによって、歩行障害、認知障害、尿失禁などの症状が良くなります。
発生頻度は、認知症の原因の5%~10%と言われています。 日本全国に70万人程度の方が罹患している可能性があり、これはパーキンソン病の2~4倍の有病率です。 しかしながら、その診療率は低く、ほとんどの方が見過ごされているのが現実です。
1.髄液排除試験(タップテスト)
タップテストは腰椎穿刺髄液排除試験のひとつです。 iNPHは髄液貯留による脳室拡大と三徴候、歩行障害・認知症・尿失禁をきたします。ですので、腰椎のクモ膜下腔から過剰に溜まっている脳脊髄液を少量排除することによりこれらの症状が改善するかを診断することができます。これにより外科的治療(髄液シャント術)の必要性を調べます。 腰椎(腰骨)の間から脊髄クモ膜下腔に穿刺針を刺し髄液を排出します。 一回の髄液タップテストで症状が一時的に改善することもあれば、複数回の髄液タップテストの後に症状が改善することもあります。 3日程度の検査入院を必要とします。症状の改善度合いについてはタップテスト後にご家族の観察がとても重要です。自宅に帰られた後に症状の変化を注意深く観察しましょう。
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2.脳MRI/MRA(特発性正常圧水頭症の診断目的)
最新の撮影方法を使って、正常圧水頭症に特徴的な画像所見について検査します。 典型的な特発性正常圧水頭症では、脳室の拡大とともに、頭頂(高位円蓋部)あたりの脳実質が詰まって見えます。脳梗塞や脳の血管の病気を合併してないかを診断します。さらに当院では、TimeSLIP(Time Spatial Labeling Inversion Pulse)と呼ぶ最新の撮影法によって、水頭症における脳脊髄液の動態を評価します。 VIDEO VIDEO
手術のご案内
治療は髄液シャント術を行います。脳室や腰椎くも膜下にチューブをいれ皮下を通し、シャントバルブを埋め込む手術(V-Pシャント・L-Pシャントなど)です。30分から1時間という比較的短時間ですみます。シャントバルブには髄液の流量を制御する機能があります。また、髄液の流量は手術後に調整が可能です。入院期間は約1週間です。
スタッフ紹介
担当医師 山田晋也
久我山病院脳神経外科顧問 順天堂大学脳神経外科非常勤講師
経歴: ・1982年 東海大学医学部卒 ・1988年 ブラウン大学脳生理学教室研究員 ・1996年 池上総合病院副院長 ・1999年 南カルフォルニア大学脳神経外科研究員 ・2001年 ロサンジェルス小児病院神経外科教室研究室長 ・2011年 東海大学大磯病院脳卒中神経センター長 ・2015年 南カルフォルニア大学招待准教授 ・2015年 東芝林間病院脳脊髄液水頭症センター長
専門領域: 脳神経外科一般、水頭症
学会認定資格: 日本脳神経外科学会専門医、日本神経内視鏡学会技術認定医、日本医師会認定産業医
所属学会: 日本脳神経外科学会、全米脳神経外科学会、日本脳神経外科コングレス、日本正常圧水頭症学会、 国際脳脊髄液水頭症学会、国際水頭症画像ワーキンググループ、国際核磁気共鳴学会、 日本核磁気共鳴学会、クロアチア脳神経外科学会名誉会員、日本脳卒中学会、 日本神経内視鏡学会、日本小児脳神経外科学会、国際小児脳神経外科学会
紹介医療機関の先生方へ
手術により歩行障害・認知機能障害・排尿障害の3症状が改善し、患者さんご本人の自立が高まれば、介護負担も軽減され、患者さまおよびご家族様のQOL(クオリティー・オブ・ライフ)の向上が可能になります。 また、特発性正常圧水頭症は認知症の原因疾患のひとつとして扱われることが多く、神経内科や精神科領域の疾患と捉えがちですが、初期症状は歩行障害から現れる特徴から考えると、初診ではかかりつけ医や整形外科、リハビリテーション科などを受診されることも多いように思われます。iNPHが疑われる症状、脳室拡大の所見の方がいらっしゃいましたら是非、ご紹介いただきたくお願い申し上げます。
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