こんにちは、久我山病院リハビリテーション科の前田です。今回は痛みに関するお話です。
皆さんは痛みを感じた時、どうしてますか?
リハビリをしている患者さんからも「痛いときって温めた方がいいの?冷やした方がいいの?」と聞かれることがよくあります。
一般的には肉離れ・ねん挫などのケガをした直後や、手術を受けた後に腫れや痛みが強い時期は、“RICE”が推奨されています。“RICE”とは「Rest:安静にする」「Icing:冷やす」「Compression:圧迫する」「Elevation:挙上する」からなる造語です。激しい運動後の痛みにも有効とされており、プロの投手や高校球児が試合後に肩を冷やしたりするのを見たことがある方もいるのではないでしょうか。
一方、デスクワークなど長時間同じ姿勢をとることで生じやすい慢性的な腰痛や肩こり、筋肉のこわばりによって起こる、こむら返りなどは温めた方が良いと言われています。
なお、膝などで多く聞かれる変形性関節症については、基本的には温めた方がよいとされていますが、水が溜まっていたり、熱を持っている場合は冷やした方がよいと言われています。(痛みが継続する場合は、お近くの整形外科を受診しましょう)
これらの判断のポイントは『炎症』を起こしているかどうかです。原則として、炎症を起こしている時は冷やしたほうがいいとされています。
ただし、アイシングは組織の治癒を遅延させるなどの否定的な意見もあり、アイシングの是非については現在も結論が出ていません。痛みや炎症が改善してきたら、過度に冷やし続けることは控えましょう。
ケガや手術により壊れた組織を修復するために起こる反応のことです。老廃物の排除や組織の代謝を促進するために、血流が急激に増加し主に5つの徴候が見られます。
個人差や状況によって差はありますが、一般的にケガや手術から2~5日までが炎症期とされています。(1つの目安として、お風呂に入った際にジンジンと痛む場合は炎症している可能性があります。)
市販されている冷感湿布・温感湿布などは、薬剤を皮膚から浸透させることで鎮痛効果を図っており、基本的にはどちらも同様の薬剤が含まれています。
実際に患部を冷やしたり温めているのではなく、湿布薬に含まれているメントールやトウガラシ成分のカプサイシンによって、文字通り冷たく(温かく)「感じる」ように作られているんですね。
今回は、炎症の話も含め、痛みが出たときの対処方法の一部について話をさせて頂きました。皆様が迷った際の判断の一助になれば幸いです。
<参考文献>
・渡辺正仁,早﨑華,由留木裕子:痛みのメカニズムと鎮痛.2017
・小山 諭,中野 雅人,亀山 仁史,若井 俊文:創傷ケアにおける周術期栄養管理の役割.
WOC Nursing.2014:vol2 No7:52-53
・川村 博文,西上 智彦, 伊藤 健一, 大矢 暢久, 辻下 守弘.:疼痛に対する物理療法・運動療法,The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine,2016:Vol53:604-609
・奈良 勲,鎌倉 矩子:標準理学療法学 作業療法学 専門基礎分野 病理学(第3版),医学書院,2009
・Masato Kawashima, Noriaki Kawanishi,,Takaki Tominaga, Katsuhiko Suzuki, Anna Miyazaki, Itsuki Nagata,..., Takamitsu Arakawa:Icing after eccentric contraction-induced muscle damage perturbs the disappearance of necrotic muscle fibers and phenotypic dynamics of macrophages in mice,Journal of Applied Physiology.